枕の上で夢に溺れて

極上の寝具で眠りたい

書籍の山崩れ

 いわゆる「積読」と呼ばれている行為である「買っておいたまま読んでいない本」の山がいよいよ"なだれ"を起こしもみくちゃになって、部屋が無残な被災地と化してしまったので、床で将棋倒しのようになっている本を少しずつ片付けつつ手に取り、読み進めている。ただただ理由なく先延ばしにしていただけで、読もうと思えばいつだって読めるはずだったのに。

 本は良い。精神のオアシスである。しかし書籍というものの存在は年々とてもコアになりつつあるように感じる。というのはあくまで肌感覚の話で、何らかの統計に基づいたものではない。本を読んでいる人が以前よりも少なくなったのかもしれないという憶測の話でしかない。

 世の中の娯楽は、ここ最近、一気に「インスタント化」したように見える。あくまで支持を集めているものに限定して言っているけれど、時間を取るものや、何らかのコストがかかるものは敬遠されがちなんだろう。決してそれが悪いと言いたいわけではなく、それもひとつの形だと思っているけれど、ただただなんとなく寂しく感じる。現代人は、あんまり余裕が無いのかもしれない。

 エンドロールが流れ出した途端に席を立たねばならないほど、せわしない日々を生きているのかもしれない。ゆったりと流れるクレジットを眺めては深いため息なんかついてみたりして、じんわりと染み込んでくる余韻に浸りながら、現実と空想の境界を彷徨いつつ、無いものに対して想いを馳せる。こんな行為を愛おしく思い、止められなくなっている僕のような人間の方がよっぽど異端であることぐらい、とっくに分かってはいるけれど、なんだか時々、えらく寂しい気持ちになる。

 書籍を読む人がもっと増えて、「あとがき」を嘗め回すように読むことの幸福感を多くの人が味わってくれればいいと時々思うけど、こんな気持ちなんて一生分からなくたっていいとさえも思う。